猫の特発性膀胱炎と♂猫の尿路閉塞のお話①

前回の僕のブログの最後に書いたように今回は少し真面目な病気の話を書いて行きたいと思います。

今回のお話は『猫の特発性膀胱炎と♂猫の尿路閉塞』です。


10歳以下の猫で発生しやすい下部尿路疾患(尿道、膀胱の病気)の種類を以下に挙げます

☆特発性膀胱炎  55−64%
☆尿石症     15ー21%
 (ストラバイトやシュウ酸カルシウム)
☆尿道栓子    10−21%
 (尿道に死んだ細胞や血餅、炎症産物が溜まり栓をしてしまう事)
☆解剖学的欠損  10%
☆行動学的傷害   9%
☆尿路感染症   1ー8%
☆腫瘍      1−2%

特発性膀胱炎とは、猫の下部尿路疾患の約半分を占める原因不明の膀胱炎の事をさしています。

まずこの病気に焦点を当てたきっかけが、ここ数日膀胱炎の症状(頻尿、血尿、排尿痛 etc)を訴える猫ちゃんの来院が多かったことです。

なかでも1匹の猫ちゃんは尿路閉塞(オシッコが出せなくなる)ににより重度の腎不全になってしまいましたが数日の集中治療により何とか救命する事ができました。

最近では猫の膀胱炎はフードの品質の向上や室内飼育が増えた事、飼い主様の病気に対する知識が豊富である事等により一昔前に比較してこの病気はやや減少傾向にあるかなと個人的には思っていますが、実のところここ十数年発生率に変化は無いと言われています。


なぜ猫が膀胱炎を起こしやすいのか???
それは猫の祖先が中東の砂漠地帯に生息していたリビアヤマネコで、砂漠地帯で極限まで水を飲めなくても生存できるような体の作りになった事が原因である事が分かりました(2007年サイエンス誌)
d0224555_1613690.jpg

リビアヤマネコの写真です。めちゃめちゃ美しいフォルムですね!



体内の水分を少量で最大限に利用する為に尿は濃くなり、濃くなった尿は膀胱に刺激を与えまた尿石症の引き金になり・・・。この生理学的な体質がそのまま家猫に受け継がれたと言われています。

一般的に10歳以下の猫の特発性膀胱炎の発生頻度には♂♀の性差は無いと言われています。
しかし、一番問題になってくるのは♂の場合♀に比較して尿道が狭いため膀胱炎からの栓子形成やストラバイトなどの結石が原因で『詰まり易い』という現象があらわれて来てしまいます。


尿が出ないと(尿路閉塞を起こすと)体の中でどのような事が起こるかというと・・・

☆高窒素血症・・・・本来なら腎臓から尿へと排泄される体内の老廃物が過剰に体に貯まる
 (腎後性腎不全)
☆高カリウム血症・・・Kというイオンが過剰に貯まると致死的な心停止や不整脈が起こる
☆代謝性アシドーシス・・・重度になると心抑制を起こす
☆脱水

特に恐ろしいのが高窒素血症と高K血症であり、まる1日尿が出ていないとこれらの原因により死亡してしまうこともある非常に恐ろしい病気なのです。

以上の事より猫の膀胱炎の症状(頻尿、血尿、排尿痛)が見られた場合には、特に『♂猫』の場合にはあまり様子を見ずに早めの動物病院の受診を強くお勧めします。

で、この病気の予防に関してですが・・・、長くなってしまったので次回にお話ししたいと思います。



東大阪市 ピース動物病院 院長 成田和博
[PR]

by peace-vs | 2011-10-28 11:51 | 病気の話 | Comments(0)