犬の乳腺腫瘍について

8月に入ってからもバタバタして中々ブログをupする機会がありませんでした007.gif

漸く色々と落ち着いて来たので久々の院長ブログです。

今日のブログは『犬の乳腺腫瘍』について027.gif


 犬の乳腺腫瘍は飼い主さんが「お腹にしこりがある、や胸にしこりがある」などと気づかれて来院される事も多く、また今現在当院で行う腫瘍切除手術の中でも1番行う機会が多い腫瘍です。

 では、どうして乳腺に腫瘍ができてしまうのか??

 残念ながらはっきりとした「コレだ!」という原因は分かっていません。

 ただ、発生原因の可能性として女性ホルモン(エストロゲンやプロジェステロン)との関係があげられています。

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↑この表は飼い主様に避妊手術のメリットのでのお話に僕が良く使う避妊手術と乳腺腫瘍との関連をまとめたスライドです。

 見て頂くとお分かりの様に、避妊手術の時期が遅い = 乳腺腫瘍発生のリスクが増加しています。
つまり、女性ホルモンの暴露期間と乳腺腫瘍の発生率は比例しているのです。


 では、うちの子のオッパイにシコリが見つかった!病院ではどんな検査、治療をしてくれるのかしら??以下は当院での乳腺腫瘍に対する診察・治療の流れを書いて行きます。


 先ず診察台で行うのは乳腺全体の丁寧な触診です。犬の乳頭は4〜6対あり(多くは5対)乳腺腫瘍はどの乳頭領域にも発生する可能性があります。
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この際の触診で、問診で聴取したシコリだけでなく複数個のシコリを見つける事も少なく有りません。シコリの状態によってはFNA(針生検)を行い、乳腺腫瘍以外の他の腫瘍(脂肪腫、肥満細胞腫、軟部組織肉腫)の鑑別を行う事もあります。

 この段階で胸に出来たシコリが乳腺腫瘍である可能性強く疑われた場合には、次のお話で①手術をするのか②シコリの大きさを気にしつつ経過観察にするのか飼い主様に決めて頂きます。

 犬の乳腺腫瘍発生率の約50%は良性で約50%が悪性であり、更には悪性腫瘍の犬の50%で診断時には転移巣が認められ、そのほとんどが肺や所属リンパ節に転移しているという事です(あくまで統計上の話ですが)。

 以上のお話で手術を希望された場合、次の検査は胸のレントゲン検査(レントゲンで見て分かる乳腺腫瘍の肺転移が無いか?の確認)と腹部超音波検査(避妊手術をしていない場合、子宮卵巣に問題がないか?お腹の中のリンパ節が腫れていないか?)を行い、どの程度の切除が必要なのかを検討して行きます。

この際、子宮卵巣に異常があれば同時に避妊手術をお勧めしますし、異常が無くても飼い主様の希望が有れば避妊手術を同時に行います。


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 上でも書きましたが犬の乳頭は5対ほどあり、第1〜3乳頭はそれぞれが乳房リンパ節で繋がり脇のしたのリンパ節に続いています。また、第4・5乳頭も乳房リンパ節で繋がり鼠径部のリンパ節に繋がっています。また、犬では第3乳頭と第4乳頭の間にリンパ管吻合が見られる事もあります。

 この解剖学的な特徴は切除範囲を決めるのに非常に重要で、もし発生した腫瘍が悪性であった場合シコリとその周囲だけの小範囲の切除だけで行うと「腫瘍の取り残し」をしていまい予後が非常に悪くなってしまいます。

 ですので、乳腺の手術に置ける最も大切な事が、悪性である可能性が50%もあるので可能な限り広範囲に切除する事なのです。
このようなこともあり、当院で最も多く行うのは片側全乳腺切除です。

 全切除のメリットは腫瘍の取り残しが少なくなる事、片側の乳腺を全て取るので取った部位の乳腺のシコリは将来的に発生しない事(当たり前ですが)です。唯一のデメリットが手術侵襲が多くなる事ですが、使用する医療機器や疼痛のコントロール、術者の手技でカバーできる範囲だと思います。

 次に多いのが部分乳腺切除術(第1〜第3乳頭領域の切除、第3〜第5領域の切除)で、この術式は片側全摘出よりも若干手術侵襲も少なく、シコリの個数が少なく大きさも小さい場合には有効です。


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 少し前に行った手術の写真です。写真では分かりづらいですが、左乳腺の1列に3mm〜2cm程度の小さなシコリが触診で分かりました。このケースではほぼ全ての乳頭領域にシコリが複数個見られたので片側全乳腺切除術を行いました。

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 術後の写真です。左の全乳腺を切除しました。同時に左鼠径リンパ節も切除しています。


 根治を目指すためにどうしても傷は大きくなりますし、そのため痛々しく見えますが術後の管理をしっかり行えば(感染のコントロール、疼痛のコントロール)術後の翌日には元気に退院してくれる事が多いように思います。


 以上が当院で行う一般的な乳腺腫瘍の対処・治療になるのですが、必ずしも全ての犬に適応される訳では有りません

 他に病気が有り(心臓病や腎臓病など)があり麻酔のリスクが高い場合、また既に肺転移が見られた場合には手術自体を断念せざるを得ない場合もありますし、全摘出ではなく手術侵襲を少なくするためや麻酔時間を短くする為にシコリの姑息的な部分摘出を行う事もあります。

 最後になりますが、もし飼われているわんちゃんのオッパイに小さくてもシコリが見つかった場合にはお近くの動物病院を受診・相談される事をお勧めします。良性でも悪性でも最初は小さはシコリから始まりますので。


        東大阪市   ピース動物病院   獣医師   成田和博



 
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by peace-vs | 2012-08-10 11:14 | 病気の話 | Comments(2)

Commented by 姥桜 at 2012-08-16 08:27 x
お久しぶりです♪
うちの茶豚(茶色ダックス)も5月にシコリ発見し手術しました。
幸い良性混合腫瘍でしたが今後も要チェックですね。
そして避妊もしたんで肉体が飼い主みたいに膨らまないようにしなきゃです(笑)
Commented by peace-vs at 2012-08-17 08:52
姥桜さん>
 お久しぶりです! 手術も結果も問題なくてよかったです、おっしゃる通り他の部位にも発生する事があるので注意してあげて下さいね。
 姥桜さんはわんちゃん達の食事も大変気を使っておられるので肥満は大丈夫ですよ!・・・多分w