去勢手術と潜在睾丸(陰睾)のお話

いよいよ明日からは7月、暑さに負けぬ様頑張って行きましょう!!

と言いつつ、去年はバッチリ熱中症になってしまった院長の成田です048.gif


今回の病気の話は、前回に引き続いて雄のわんちゃんに多い潜在精巣(陰睾)のお話です027.gif

当院で行う手術でTOP3に入るのが去勢手術なのですが、通常診察時の身体検査や術前検査で良く遭遇するのが「タマタマ(睾丸)が1個しかフクロに降りていない」や「去勢手術もしていないのにタマタマが無い」などです。

飼い主さん自身で気づかれている事も多いのですが、診察の際に僕がお伝えして「ええ!?そうなの!??」って言う事も有ります。

一体何故そんな事が起きてしまうのでしょう??

元々生まれたてのわんちゃん猫ちゃんの雄は陰嚢に睾丸は無く、実はお腹の中に収まっています。そして、約1月くらいかけてお腹の中から陰嚢に睾丸が降りてきます(これを精巣下降といいます)。

この一連の流れに以下の様な事が生じると潜在睾丸(陰睾)が生じると言われています。

①精巣下降に関与する性ホルモンの不足
②鼠径管(お腹にある睾丸が陰嚢に降りる為の通り道)の形成不全
③精巣を陰嚢にまで引っ張ってくる精巣導帯(靭帯)の発育不良

などなど・・・またこれらは全て遺伝的要因によるものなので、潜在精巣のわんちゃんを交配させると、その子の代の雄のわんちゃんも潜在精巣になるリスクが高くなります。


また、潜在精巣には5つのパターンが有ります。

❶片側鼠径部の潜在精巣(片方は正常、もう片方は陰茎の脇にある)
❷両側鼠径部の潜在精巣(両方とも陰茎の脇にある)
❸片側腹腔内の潜在精巣(片方は正常、もう片方はお腹の中にある)
❹両側腹腔内の潜在精巣(両方ともお腹のなかにある)
❺鼠径部と腹腔内の潜在精巣(片方は陰茎の脇に、もう片方はお腹のなかにある)

 これらのパターンを注意深い触診や場合によっては超音波検査により判断し、手術法を決定します。

 鼠径部の潜在精巣は陰茎の少し横を小切開する事で比較的容易に摘出が出来ますが、問題は腹腔内の潜在精巣。コレは基本的には開腹手術が必要になってきます(病院によっては腹腔鏡手術により小さな傷で摘出を行っている所も有ります)。

以下は最近行った手術で摘出した精巣の写真です。今回は加工してありません。

d0224555_17521064.jpg

この図は❶のパターンの潜在精巣です。

d0224555_1841967.jpg

コレは珍しい猫ちゃんの片側鼠径部の潜在精巣(上が正常、下が萎縮した精巣)
猫の潜在精巣の発生率は約0.1%という報告が有ります。

d0224555_1863444.jpg

コレは本日の手術で摘出した片側鼠径部の潜在精巣(右が正常、左が萎縮した精巣)
ちなみに犬の潜在精巣の発生率は約1%と言われています。

こうして見てみると❶のパターンが当院でも多い様に思います。

 潜在精巣が正常の物より萎縮しているのは、潜在精巣が犬の体温の環境下(大体38.5℃)にあると精子形成が障害されるので未発達になるからです。

 長々と書き綴った為、おさまりが付きづらくなってきましたが、最後に今回僕がこのブログで書きたかった大切な事は『潜在精巣のコは精巣腫瘍の発生危険率が13.6倍正常な犬に比べ高くなる』つまり、『潜在精巣の子はなるべく早く(腫瘍化してしまう前)に両方の精巣を手術で摘出しましょう!』という事です。

 精巣の腫瘍は一般的には良性である事が多いですが、一部の腫瘍特にセルトリ細胞腫では約10%で転移を起こしその腫瘍が作る過剰な雌性ホルモン(エストロジェン)の影響により最悪死に至る事も有ります。
 
 雄の去勢をしていないわんちゃんを飼われている飼い主様へ。

 そのコの睾丸をよく見て出来れば触ってあげて下さい。もし睾丸が1個しか無い 、もしくは1個も無い場合には掛かり付けの動物病院の先生に相談してはどうでしょうか??


 早期発見、早期治療、予防に勝る治療は有りません027.gif



        東大阪市  ピース動物病院  獣医師  成田和博

 
[PR]

by peace-vs | 2012-06-30 18:32 | Comments(0)